Dam-Funkの制作スタイル、機材について

Dam-Funk はG-funk(米国西海岸のファンク寄りのギャングスタ・ラップの総称)のミュージシャン上がりで、経験を積んだ後にインスト(ラップ無し)のファンクを作りたくなり、ソロ活動を始めた。

G-funkの制作スタイルはミュージシャンに弾いてもらったものをサンプリングしたりしてトラックを作るのでシンセやギターを演奏するミュージシャンが関わる。

Dam-Funk はシンセが「弾ける」ということ。これが全てといってもいい。

↓ Dam-Funkの旧・ガレージスタジオ

↓写真はこのサンレコから。見開きでDam-Funkの制作スタイルについて詳しい記事あり。
Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2009年 08月号 (CD-ROM付き) [雑誌]
基本的なやり方としては5,000枚のコレクションのなかから、レコードを色々と聴くところから始める。
聴くだけであり、サンプリングはしない。レコードはアイデアを得るためにあるそうだ。

イデアが浮かんだら、古いリズムマシンDam-Funk はビンテージリズムマシンのコレクターである)でマシンビートを組み、あとはそれに合わせて両手を駆使してコードとベースラインをリアルタイムで弾いて重ねてCD-Rレコーダーに録る。いわゆる一発録りである。

そして、モノラル録音。最近のはステレオで広がりもあるが以前のサウンドは堂々のモノラルっ!

基本的にはこのやり方で録音するらしい。
サンプリングしないのでサンプラーは使用しない。もちろんMPCも使わない。

ミスをすれば最初からやり直しになるし、機材のトラブルも多々有り、時にはCD-Rレコーダーがエラーで止まることもあるそうで、決して楽なスタイルではない。

しかし、Dam-Funk は前向きであり、この苦難のレコーディングを通して演奏の腕が日々上達していくことをメリットと捉えているそうだ(いい話)。

メインのリズムマシンはSEQUENTIAL CIRCUITS のTOMという機種。
http://www.youtube.com/watch?v=QxOjTAGdWPU

シンセの使用例としてはコードを鳴らすのはRolandのαJUNO-1、ベースは同じくRolandのJX-3Pだそうだ。
ボコーダーパートは初代MicroKorgだと思われる。

このローランドのシンセやMicroKorgは中古価格も安く、特に珍しくもない機種。このへんも面白いところ。なんか親しみが湧く。

パイオニアのDJミキサーDJM-500でシンセにディレイをかけたり、marantzのオーディオ用のプリアンプで音に温かみを加えたりするのも好きなようだ。

機材のセレクトを見るに、彼のサウンド的な興味は最新のビートではなく過去方向にある。ノスタルジックな80年代のエレクトリックファンクは僕も好きなので共感を覚える。

かっちりした機械のビートに手で弾いたシンセの揺れが絡むことでグルーヴを出すスタイル。
これはシーケンサーの打ち込みだけでは再現できない。
ファンクスタイルの鍵盤演奏能力が必須だ。

Dam-Funkは「モダン・ファンカー」というキャッチコピーが付けられていたりするが、それは彼のスタイルがG-funkそのものだからだと思う。

ヒップホップ的な意味で「ヤバい」トラックを作るセンスを備えているので音は古いが、感覚は新しい。

一方、「ファンク好き」の視点から聴くと、歌も「決めのリフ」もほとんど無いのでちょっと間延びしたような感じがあり脱力的な印象もある。これはラップのバックトラックから進化してきた名残であり、これがクールさとちょっと天然ぽい個性につながっている。

サウンドの傾向としてサイケデリックであるというのも特徴だ。現実逃避的なトリップ感があり、ドラッギー。
日本人的には風呂上りなんかに飲み物を飲みながら聴くと爽やかで大変気持ちが良い。

↓ Dam-Funkの現在のスタジオ
http://www.youtube.com/watch?v=6QkoUaKFIFg

現在はプロツールズに録るみたいだ。
オーディオ・インターフェイスを使ってマルチレコーディングしてDAW内部でミックスするようになっている。普通に重ね録りもするし、分離が良くなり、結果として質感のにおける個性が失われてしまったように思えてしまう。

このへんはハードウェア主体で作っている人がDAWに移行したときの定番のジレンマではある。
Dam-Funkの場合、演奏の揺れや独学のコードワークが魅力なので、音が分離良くなってしまっても魅力は残るが、以前の少し分離の悪いCD-Rに録ってたころの音のほうが好き。Dam-Funkとしては以前のやり方は大変すぎるので二度と戻らないだろうが(笑)。

↓このアルバムの14曲目は分離が良くてステレオであり、前半の音と比べるとテイストが異なる。おそらくプロツールズ導入曲?
Toeachizown
Toeachizown - Dam-Funk
Toeachizown - Dam-Funk

Dam-Funk (デイム・ファンク)を聴いたら「Daft Punkのようなポップスを作らねば!」という強迫観念が解消された気がした。
このような自由で肩肘はらないスタイルで新しさもあるファンクを作れたら楽しいだろう。