Ableton Pushの動画レビュー
http://www.youtube.com/watch?v=GXFR-UsSGzM
↑かなり長い動画になったけど細かくレビューしたつもりです。
ようやく買ったAbleton Push。
1年以上買うか買わないか考え続け、検討し続け(笑)。
色んな不安、例えば
- パッドの感度
- シンセやエフェクターなど各種パラメーター変更などはマウスに戻ってしまうのでは?
- 置き場所の問題
- 5万円くらい予算を使うなら他の機材のほうがいいのでは?
などがあったけど、導入してみたらそれらは全て大丈夫だったという。例えばパッドの感度はこれ以上ないくらい素晴らしい。Userボタンを長押しすると調節できる。詳しくは動画をどうぞ。
届いた初日は疲れていたけど、使いたい!という欲望だけでいきなり使いこなそうとして頭が痛くなり、買ったことを結構、後悔。
次の日からはすんなり使いこなせてしまい初日の苦労の感覚を忘れそうになったが、それこそが、これから導入しようか迷ってる人にも伝えないといけない情報だと思うので思い出し書き記す。
昨年の11月に都内の楽器屋を巡った際に思ったほどAbleton Pushは展示されてなかった。
一方で、16パッドのAKAI MPCから派生した系統の機材、例えばMaschineやMPC STUDIOなどは結構展示されてた。
音ネタをロードさえできれば後はパッドを叩くだけ!という16パッドのシンプルさと違ってAbleton Pushはいきなり触っても意味不明なデバイスかもしれない。
Ableton PushはAbleton Live9というソフトウェアをハードウェアとして具現化したコントローラーなのでLive 9という概念がまず前提となる。
【Ableton Live用コントローラー】●Ableton Push 【数量限定プライス】 |
僕はLive9のセッションビューをいつも使っているけども、Ableton Pushのたくさんあるボタンとの関連性が最初は難しかった。
つまり、Live9に慣れている人でも最初はLive9との間にAbleton Pushというキャラクターが立ちふさがるような感覚になる。
Ableton Pushのキャラクターは沢山の専用ボタンと美しいデザイン、単純で1つのことに集中するための仕組み、ドラムやベースライン、シンセのリフなど「単旋律」向きのステップシーケンサーやスケール機能などの集合の印象から成る。
このPushの「キャラクター」を受け入れて、ボタンの配置や関係性などの約束事を覚えていけば結構素晴らしい機材である。
例えば三年くらい前のAbletonソングファイルはどうしても客観的にしか捉えられず、当時のテンションで入り込んでの作業再開は難しいが、そういうことがAbleton Pushだとし易い。主観的に入り込んで再構成したり新しいトラックに作り変えたりするのに向いている。
パソコンの画面は客観的な作業に向いてるので古いソングファイルに入り込んでハイテンションになるのは難しい。それは作ってる最中にも言えてて「見え過ぎる」ことが障害になってた。Ableton Pushは主観的に捉えたり例えば音作りなど目の前のことに集中するのに向いている。
ドラムはもちろん、Operatorでベースの音作りをしながらハウス、ディスコっぽいフレーズを打ち込んだりするのは快適に行えて安心した。
しかし打ち込んだベースの旋律をMIDIでエディットしようとするとPushの8×8のパッドから成る「画面」では狭く、途端にマウスとパソコンの画面を使いたくなってしまった。
だから素直にMIDIエディットはパソコン側で行った。
この手のコントローラーはマウスのことを思い出したらすぐにマウスに戻ったほうがいい。無理して使ってもストレスになるだけだ。
Pushでもできるけどマウスとパソコンの画面、そして鍵盤でやったほうが良い作業は
などが挙げられる。
デバイスのロードをマウスで行ったあとはすごく自然にPushのツマミでパラメーターを変更していける。まだAbletonの付属デバイスしかPushから操作していないから、VSTプラグインなどの場合Rackデバイスに入れてマクロにアサインしたりする必要があるだろう。
その場合もPushからパラメーター変更できるという楽しみがあると比較的楽しくできそうだ。
要らないクリップやトラックのデリート作業(そしてUndo)などはPushで行うと気持ちがよく、楽しい。
ドラムの音を打ち込む作業に関しては、もうマウスでは絶対やりたくないくらいPushのほうがやりやすいし、楽しい。
僕はビートをスウィングさせるときもドラムの音符を一つづつマウスでずらしてグルーヴを作っていくやり方なのだが、その作業もPushのパッドとツマミで完全に同じ感覚で置き換えることができて驚き、嬉しかった。
Pushの8×8の「鍵盤」はどちらかというとギターのフレットに近い。スケール機能は素晴らしく、スケールを変更すると無駄なく8×8の鍵盤が光で並び替わる。
スケール機能を使ってリフを作ったり、ベースやドラムを打ち込んだりすると、コード進行から作るような音楽とは異なるプリミティブ(原始的)な感覚の世界が作れる。
例えばクラフトワークの音楽はリフから出来ている。民族音楽の多くもそうだ。ヒップホップのヤバめのリフなんかも民族音楽の引用だ。
コード進行から作ると進行は変化し続ける必要があり、仮にループさせるとしてもジャズ的な「甘さ」が必要。ロックを含めリフから出来た音楽のプリミティブな世界とコードから作る音楽の印象の違いはこの辺かなあと。例えば中田ヤスタカの音楽はビートがあるけどプリミティブな感じとは違う。
ヘビメタ、バッハ、そしてダフトパンクなどはリフから出来てるけどコード進行でもあり、この辺のサウンドも面白い。
ちょっと脱線するけど、ルーツレゲエを再現するとき、あれは確かにコード進行があるけど、コード進行の感覚で演るとフォークソングみたいになってしまって世界観が近づけなくて、リフとして作っていくとプリミティブな感じが出てくる。これを逆手に取ってフォークソング化したのがH Jungle with Tで、面白かった。
ルーツレゲエは本質的にはギターで作る民族音楽で、フォークソングはギターなのに鍵盤的な発想の和声的な音楽だという風に思える。
更に、思いついたので書くと、ダブステップのシンセはリフとも違うしもちろんコード進行でも無い。あれはロックのシャウトとかアドリブの感覚をシンセで置き換えたもの。そこが新しかった。だから声っぽい、叫びっぽいんだと思う。三連符が多用されるのも重いビートもヘビーなロックの感覚を思いだす。
正解かどうかはともかく、ダブステップのシンセサウンドやリフレーズを作るときに叫び声やシャウト、ロックボーカルのアドリブ的な感覚で作ると良いのが出来そうだ。スケールでもないしコードでもないのでどういう心持ちで作ればいいかが分からないところがあったので。やっぱ特殊だわー。TB-303もやはり打ち込むコツは声の感覚だな。
話がかかなり脱線したけど、僕が作っているようなディスコ、ハウス、テクノ、レゲエなどの音楽の場合7割くらいの作業はPushで行える。
パソコンの画面を見なくて済む時間が増えるので目にやさしい(パッドの明るさは裏ワザで変えられる)し、マウスのように固定された動きではないので手が腱鞘炎になりにくくなる感じがする。
音の判断をグラフィックに左右されにくくなり、耳だけで作っていける。ツマミとパラメーターの数字で音作りを行う感覚はハードウェアそのものであり、懐かしくもある。
Ableton PushはMIDIのコントロールチェンジとノートナンバーを送受信するデバイスであり、Ableton Live9との通信に特殊な専用プロトコルなどは使っていない。ファームウェアのアップデートはSysexで行う。
つまり、ソフトウェア側で対応させれば色んなソフトウェアから使えるオープンなデバイスだ。もちろんMax for LiveでPushを活用する面白いアプリが少しずつ増えていっている。案外奥行きのある世界が広がっているコントローラーでもある。
手持ちの色んなハードウェア機材との組み合わせなど、色々と試してみたいことがたくさんあるので結構長く楽しめそうだ。
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