touchAble 1.2 で考えたAbletonの今後

touchAbleについての記事一覧
2011年10月現在、主にプラグインの操作に愛用している。
http://d.hatena.ne.jp/coldplayer/searchdiary?word=touchable

AbletonをコントロールするためのiPadアプリが大幅にアップデートしました。
touchAble - AppBC
touchAble 1.2touchAble - AppBCはXYパッドに慣性アルゴリズムが付きました。これによってAbleton本体だけでは出来ない大変たのしい操作方法がiPadで可能になりました。ハードウェアのコントローラーも色々ありますが同じ事は出来ません。

↑音がチープですみません。MacBookのスピーカーから鳴らしているからです。
↓こちらはオフィシャル動画です。

LiineのKapture PadKapture Pad - Liine(参照 http://www.youtube.com/watch?v=Mun8igFskL0)もそうですが、この方向の進化が始まったということはAbletonのコントローラーが次のフェーズに入ったということです。コンピューターの世界にコンピューター以前のハードウェアであるオーディオ・ミキサーを再現して持ち込んだマッキーコントロールのようなフィジカル・コントローラーに加えてコンピューターでしか不可能なコンピューターならではの新しい道具が登場するということです。現在Abletonは盛んにMax for Liveを推していますがLive 9ではおそらくLiveにMax for Liveが統合されることでしょう。それがどういう形になるかは分かりませんがランタイムという形でSuiteではない標準のLiveでもMax for Live用のデバイスが走るようになる可能性があります。
そうなったときにはフィジカルコントローラーとしてはiPadのTouchOSC(参照 http://www.youtube.com/watch?v=wgFINZs6ido)TouchOSC - hexlerのような変幻自在なコントローラーが最適なのです。
その中でも定番的な人気が出たデバイスは単体のアプリとしてAppストアで売ってくれという潜在的需要が発生すると思います。なぜなら、毎回使うような定番化したデバイスは汎用のコントローラーにアサインするよりも専用のインターフェースが欲しくなるからです。セッティングの手間も楽になるしね。
開発者視点から見ると無料でMax for Liveのデバイスを配布し、ヒットしたら専用のアプリをAppストアで有料で出すというビジネスモデルですね(Abletonがストアを開く可能性もある)。
Max/MSPに代表される現代美術などの専門的、実験的な分野では既に飽きられたようなインタラクティブなプログラムがAbleton,Max for Live,iPadという3つを通して「触れる」形で実体化して、ようやく実験室やインスタレーションといったロジカルな空間から世界に飛び出し、DJのような本来ロジックとは縁遠い人々のための新しい道具となりつつあります。
ターンテーブルサンプラーの起こした革命以降、新しい革命は今後も起こりそうな兆しはありませんが、視点を変えると楽器自体のエンタメ化というのが既に起こりつつある次の革命なのかもしれません。数百円から数千円というiPadアプリの値段はちょうどCDシングル、アルバムの値段です。毎週シングルが発売されるように無数の楽器がAppストアに登場する時代が既に来ています。これは終わりの始まりのような気もしますがもうこの流れは誰にも止められない。祭りに乗っかって踊りつつもどんなことが起こってその結果どうなったかをしっかり目に焼き付けていきたい。
touchAbleとKapture Padを見ていたらそんなことを思ったのでした。
 
余談
Liine Griid(参照 http://www.youtube.com/watch?v=RjvaKLFP8bk)Griid Pro - Liineの最新バージョンではiPadからAbleton Liveのピアノロールを打ち込めるようになりました。リズムパターンを打ち込むステップシーケンサーとしては最高なんですがメロディーのような音階と長さがあるようなものを打ち込んでいくのは苦痛でした。メロディをiPadから打ち込むのに最適なやり方はまだ誰も見つけていませんが半分アルゴリズムで自動生成するような、カオスパッドというよりはKARMA(KORGの一部のキーボードに搭載されている)に近いインテリジェントなアルペジエイターというのが出て来たらかなり面白いだろうと思っています。

touchAble 1.2
touchAble - AppBC