MPC1000を使う様子(JJOS128XL Ver.1.35)の解説

http://www.youtube.com/watch?v=BUth2FAjuEo

七尾旅人さんがMPC1000導入したみたい。Twitterでつぶやいてるのを見るに、なんかとても初々しい感じ。JJOSとかは、誰かそのうち教えるであろう。

そんなAKAI MPC1000だが、当方ではMPCStuffというアメリカの店から通販で買ったカスタムパーツを使って改造し、OSはJJOS128XLという有料のものをダウンロード購入して使っている。

この動画で伝えたかったのはシンセサイザーとしてのJJOS128XL。シンセとしてなかなか使える。倍音多めのMoogなどのソフトシンセの素の波形をサンプリングしてMPC1000でシンセサイズすると楽器ぽい感じがかなり出てくる。
このへんの感覚をかなり青くさい長文で書いた。
↓ちなみにサンプリングしたのはこのソフトシンセ

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昔はサンプラーといえばシンセや生楽器の代わりに、リアルな音を出すのに使われた。90年代以降はヒップホップの流れでレコードから録るのが王道。最近はというとDAWで作った音をサンプリングする場合も増えている。


MPC1000でDAWをサンプリングして再加工みたいな作業をすると変わらないようでいてやっぱ音は変わる。なんか、丸くなる。この丸くなる感じは単純に高域が削れてるとかではなく「解像度」自体が下がることによるものだと思う。DAWよりも全体的に少しぼんやりする。

この特徴、買ってからずっとなんか嫌だった。今でもDAW環境が無かったら不満だったろう。最新のくっきりはっきりした音が出ないストレスがあったはず。しかしCMの音楽などのようにやたらとエッジの立った耳につく音は聞き流せないからディープにハマれない。

そこで、ディープにハマれる音楽制作ではDAWで音を丸くしたり深みを出すため色々と工夫したりプラグイン買ったりチュートリアルを試したりとかするわけだけど、DAWは「音が良すぎる」のも真実なわけ。結局、解像度落とすためのミックスバッファー的にハードウェアを使うほうが手っ取り早かったりする。

そういう位置づけとして、以前の砂原良徳氏なんかはDAW内部でなくてヤマハのデジタルミキサーでミックスしてた。そういうのをミックスバッファーと呼ぶのかな。僕の場合はMPC1000等を使ってもうちょっと再加工まで行って、更にライヴ演奏もMPC側でやろうと今試行錯誤中。

MPC1000XLCD(ディスプレイを大きい物に改造したもの)で出来ることはハードウェア的にもOSのソフトウェア的にも、限られているので簡単ではないがそれだけにかなり楽しく、クリエイティブ。最終的な出音がDAWよりもディープな点がやる気につながっているかもしれない。要はDAWよりも音が悪い。でもそれは音楽的だという矛盾。


MPC1000を含む、全てのMPC、そして様々なハードウェアのサンプラーを使うコツについて。たいしたアレではないけど案外盲点だったりすること。


DAW以降のハードウェアサンプラー「音が太くなる」とかに代表される、割と大きめの期待のされ方で買われたり導入されたりする。

最近、みんながどんな音をハードウェアサンプラーにサンプリングしてるのかは知るところではないけど、ハードウェアに録ったからといって、マジックは起きない。流石に12bitのサンプラーに録ってピッチを落としたりフィルターかけたりして加工するとすごく変な音には「変化」する。

適当な音を用意してハードウェアサンプラーに録り、「変化」させて「太くなった」とか思ったりとか。でも、それがその人の「今作りたい音」とでありちゃんとかっこいい音であり、大音量でも問題ない品質であるかどうか?までを厳しく問うと、疑問符が付く。


例えばビートメイカーが、今の時代の音を作るにあたってハードウェアサンプラー中心で作業するというのはかなり厳しいと思う。DAW必須だし、DAWだけで良い。だからほとんどのひとにとってハードウェアサンプラーは無くていい物。

それでも、ディープな音が出したい人の中にはDAWで仕上げた音に満足できない人もいる。で、ハードウェアサンプラー導入。これがたまたまシーケンサー付きのMPCなんかだと単体で製作環境でもあるし、これで完結まではいかなくてもなにか一つMPCで作ってみようと、なる。


すると、これが案外つまんない音しか出なくて失望する。サンプラー単体機の場合でも、内部の豊富なパラメーターを弄って加工してみたものの楽しいだけで「使える」音にはならず時間だけ経って呆然としたり。それが「使いこなせてない」というコンプレックスに変化してしまったりとかもありがち。


そもそも、サンプラーというのは原音どおりに再生するためのマシンでありEmu SP-1200ですらも「太い音を出す」という意図では設計されていない。その原点に立ち戻ると、サンプラーは単なる入れ物であるということに気づく。


DAWでの音楽制作にハードウェアサンプラーを導入する際には、DAWで出来る限界点まで、コンピューター内部で音を作りこんでおくのが前提になる。それでも何かDAWでは「納得行かない音」になる場合に限って、初めてハードウェアサンプラーが活きる。


すごく当たり前の結論すぎて、書いていて恐縮してしまう。だが、ハードウェアサンプラーに夢見ていた地点からはこの当たり前の結論にたどり着くには何年もかかってしまった。



どんなに音の変化の激しいオールドサンプラーであっても、再生するための装置に過ぎず、もっといえば作りたい曲を実現するための道具に過ぎない。だから適当な音を録っていくら加工したってマジックは起きないのは当然だった。


ハードウェアサンプラーを導入したからといって使いこなす必要はない。そんなことよりもDAWをマスターするほうが先。MPCを導入してもシーケンサーは使わずパッドでサンプルを再生するだけでもOK。サンプラーの役割をそこまで限定すると初めてDAWサンプラーの位置関係が見えてくる。

テクノ・ディフィ二ティヴ (ele‐king books)

テクノ・ディフィ二ティヴ (ele‐king books)

大げさに言うと、MPC1000は単なる音ネタプレイバック機として使うと、いい。音の質感、波形の加工、エフェクトなど全てDAWで仕上げる。それをMPCにサンプリングして使う。このように使うと本当に必要な人以外は「何の意味があるの?」となる。すなわち、それでも意味があるのだ。

最後にMPCに録り、組立て直すと解像度が下がるから音が少し丸い印象になり、DAWそのままよりも、くっきりしすぎず聞き流せるようになる。それが音楽的だと感じる。

このことはMPC1000だけに限らず全てのハードウェアサンプラーに言えることだと思う。今は分離のよいDAWの音が基準になっているからハードウェアサンプラー中心に作ると無理がある。基本DAWで作り時代の流れの中に軸足を置き、

DAWで曲を完成させてから、なにか納得行かない場合それを好きなハードウェアサンプラーサンプリングし、単にプレイバックしてみる。それくらい割り切った役目限定からスタートしても良いと思う。

MPC1000 JJ OSオフィシャルページ
http://www.mpcstuff.com/



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