「物語」が陳腐化しているなかで

前半では「音楽と物語」という概念を、後半ではそれを踏まえてPerfume(パフューム)について書きます。

参考・関連

僕の見たPerfume-戯れ言 http://d.hatena.ne.jp/katoyuu/20080423/perfume
ほんとうのきみをしりたいの/「GAME」-イチニクス遊覧日記 http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20080423/
Perfumeが何がきっかけで売れたか?-ARTIFACT@ハテナ系 http://d.hatena.ne.jp/kanose/20080421/perfume
Perfumeの「GAME」とその魅力-深町秋生の新人日記 http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20080417

それでは本題に入ります。
「音楽を背景で支える物語がある」
必ず誰かが歌っているとか誰かがプロデュースしているとかいった情報をリスナーは求めます。DTMにハマればハマるほどついつい忘れがちなことですが、音楽そのものが伝わるかどうかは歌手、作り手の持つ物語の強さによって大きく左右されます。積んできたキャリアそのものが物語の強さです。

「メロディの背景にコード進行という物語がある」
同じようにメロディも和音の流れによる物語によって脚色されています。

音楽の中で最も小さくかつ普遍的な物語は音符の動き、流れであるメロディ。メロディにリアリティ、時代性を与えるのがコード進行、やビート。
ここまでは抽象的な世界の物語ですが、歌詞が与えられると具体的な世界の物語が見えてきます。そして歌い手が決まります。歌手の背景には必ず物語がひっついていて、音楽の世界が出来上がっていきます。歌手の背景にあるのは、歌手が生きている世界。地域や国、政治、文化などです。

上では書きませんでしたが「音質=音の質感」の話もありまして、これはこれで面白いので明日以降また書きます。

 「話はPerfume(パフューム)に飛ぶんですが」
俺は彼女たちの魅力の秘密は彼女たちの持つ「物語」にある思うのです。アーティストを輝かせてくれる物語は通常キャリアを地道に重ねていく事でしか得る事ができません。
高度に産業化した音楽であるJ-POPはまるでファーストフードのようだと言われてから久しい・・。アーティストの育成の仕方、売り方が保守化、平均化してしまっているんですね。楽曲の出来は保証されていて聴きやすいけれど、人としてキャラクターとして我々の心をぐっとつかんでくるようなアーティストが音楽業界の構造的な問題によって出てきにくくなっているのではないでしょうか。例外が出てくるのが難しい。

そんななか彼女らPerfumeが目立ってしまったのは必然的でした。クオリティとキャッチーさを両立させた楽曲に惹かれてふたを開けてると、地道に積み上げたキャリアという浪花節、三人の個性が醸し出す伸び伸びしたチャーム、研究対象としての中田ヤスタカ、そして戦略なのか放任主義なのか読めない彼女たちのスタッフという謎の存在。と、物語がいっぱいで飽きません。

最近では我々がPerfumePerfumeフォロワーとの違いを聴き分けるのは楽曲単位では時に難しいこともある。しかしメディアに登場してその全体像で感じたときにはPerfumeは格が違う。

全般的にJ-POPはアーティスト各人が持つ「物語」が陳腐化しているなかで豊潤な物語に支えられているPerfumeという存在は目立つし強いというお話でした。